復活の後 - Resurrection

朝。窓の外には青い空。雲一つ無い。
「ご飯が出来たからお父さんを起こしてきて。」
母が言う。弾む声。愛でるような。
私は無視する。なんでこんな。
「ねえ。」
「わかったから!」
怒鳴りつけて嫌な気分になる。母を責めても仕方ない。

私は奥の部屋に行く。中は窓が小さくて暗い。
ベッドの布団に包まれて、それがある。
私が見ているとそれは蠢き、頭に空いた2つの穴ぼこを私に向け、表面の半端な皮を皺寄らせて一際大きな穴を開け閉めする。
ああ嫌だ。キタナラしい。ケガラワしい。
これを父と呼ぶ母の気持ちがわからない。信じられない。
こんなのただの肉と骨の塊だ。
だが、母は言う。「昔のお父さんが帰ってきた」と。

それはベッドから出て立ち上がろうとする。
フラフラとしていたがやがて床にグズグズっと崩れ落ちる。
私は胃から込み上げてくるものに耐えながら、全てを無かった事にするにはどうしたら良いのかを考える。
世界は終末を迎え、死者は蘇り、最後の審判が来る。
でもまさか、見た目が中途半端に復活するとは、審判までこんなにかかるとは。
父は火葬され、白骨の状態だったが今、父には肉がこびりつきまるでゾンビだ。
そしてその状態から腐敗しつつ、もう1年過ぎているのに審判の順番はまだ来ない。
ああ。

2つの眼窩の上にはボコッと凹んだ穴。
私が空けた穴。父が死んだ原因。母はその時知らんぷりをしていた。

それは、グズグズ崩れながら私にズリ寄る。
骨ばった手が私の下腹部へ伸びる。

「いるよ、その中に。」

それがビクリと震え手を縮める。
腐った目玉がキョロキョロと泳ぐ。
こんなになっても変わらないのか。

ああ死にたい、でも死ねない。
死ねばいいのに。でも死なない。

その時は来てしまったのだから。


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